碧眼批評

観るべし、見るべし、視るべし!

バズライトイヤーのルーツ映画ではないです、この映画。『バズライトイヤー』


碧眼批評にいらっしゃいませ、みなさん。

本日はピクサー2022年の作品『バズライトイヤー』について取り上げていきます。

 

監督、原案、脚本:アンガス・マクレーン 

『ニセものバズがやってきた』『トイ・ストーリー・オブ・テラー!』監督

ファインディング・ドリーアンドリュー・スタントンと共同監督

 

2010年代のピクサー、新世代の台頭

ピクサーのフィルモグラフィを見渡すと、1990年代、2000年代には『トイストーリー』、『トイストーリー2』、、『モンスターズインク』、『ファインディング・ニモ』、『Mr,インクレディブル』とCGアニメの黎明期を彩ったクオリティーの高い作品がずらりと並んでいます。ピクサーを代表するような人材がこれらの作品を監督しています。

 

バグズ・ライフ』『カーズシリーズ』を手掛けたジョン・ラセター

ファインディング・ニモ』の監督、脚本を務めたアンドリュー・スタントン

ワーナーで『アイアン・ジャイアント』を作り、ピクサーに移籍、『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』を監督したブラッド・バード

インサイド・ヘッド』『ソウルフル・ワールド』を作り出したピート・ドクターの四人が特に目覚ましい活躍を見せました。

 

このうちアンドリュー・スタントンは『ジョン・カーター』という大作実写映画を手掛け、20センチュリースタジオ史上の最低興行収入を更新するも、しぶとく生き残り、『ストレンジャーシングス』、『ベターコールソウル』などのテレビドラマの監督として活躍、ブラッド・バードは『ミッションインポッシブル・ゴーストプロトコル』、『トゥモローランド』を監督するなど、実写の領域にも手を伸ばし、活躍の場を増やすような動きが見られたりもしました。

あぁ、それからジョン・ラセターは2016年に従業員へのセクハラ行為発覚後、ピクサーを退職後、スカイダンスアニメーションの会長としてキャリアを再出発。製作総指揮を務めたアニメーション作品が2本、そのうちの1本である『ラック 幸運をさがす旅』がApple Tvで配信中。セカンドキャリアも順調らしい。

 

2010年代のピクサーのフィルモグラフィに戻って見渡してみて気づくのは新しい世代の台頭だ。

『モンスターズユニバーシティ』『2分の1の魔法』のダン・スキャンロン、『私、ときどきレッサーパンダ』のドミー・シー。そして本作を手掛けたアンガス・マクラーレン。アンガス・マクレーンを新世代というのはちょっと違うか。

トイストーリーの短編映画を2本監督し、『ファインディング・ドリー』でアンドリュー・スタントンと共同で初長編監督デビューという経歴を持ち、アニメーターとしても、監督としてもキャリアを積んできた彼が満を持して放つのは、屈指の人気シリーズの『トイストーリー』シリーズのキャラクター、バズライトイヤーのルーツを示す映画だ。

「1995年、アンディは誕生日にバズの人形をもらった。バズは彼の大好きな映画の主人公。これはその映画だ。」とエピグラフで示される。

だが本作は本当にバズライトイヤーのルーツを探った映画なのか。

 

あらすじ

スペースレンジャーのバズライトイヤーは到着した惑星の調査を士官候補生から同期の相棒と行う。惑星の生態系から襲われ、船へと戻り脱出しようとするも崖に船体が接触、あえなく墜落。船内の人類はこの惑星に定住することに。バズは優秀で責任感が人一倍以上ある性格が故に、頑固さを発揮して周りの声を一切耳に入れず、自分一人で行動し、失敗した責任を彼一人で取ろうとする。

バズはミスを取り返そうと星間移動ができる鉱石を生成するため、恒星の周りをぐるっと光速で回って帰るという危険な任務に身を投じていく。任務に失敗し辛くも帰還するも、帰ってきたら彼にとっては4日間の任務が地上では4年の歳月が経っていた。4年の間に相棒も結婚。だが任務の成功へとひた走り、任務を続けていくにつれ、鉱石の生成に成功した時にはもうすでに相棒が年老いて亡くなり、惑星の住民にとってのスペースレンジャーは伝聞でのみ聞くような存在に。スペースレンジャーとしての任務も打ち切られる。

だがここでも持ち前の頑固さを発揮して、惑星の住民を勝手に移住させようとして住民と揉めて、再度宇宙船に乗り込み、恒星の周りをぐるっと回って帰って4年が経った惑星へと降り立つと、そこはひと気のない人を襲うロボットがうようよする荒涼とした惑星へと変貌していた......。

広大な宇宙と向き合い、課せられた任務に孤独に没頭する男

前半はスペースレンジャーの外面を除けば少年が憧れるような要素とは程遠い、広大な宇宙と課せられた任務に孤独に没頭する男を描いた作品であり、『アド・アストラ』(2019)、『ファースト・マン』(2019)と軌を同じくする作品です。

 

トイストーリー』(1995)でのバズ・ライトイヤーは自身がおもちゃである現実を受け入れず、宇宙を救うスペースレンジャーだと勘違いした困ったちゃんでしたが、本作の彼も団体行動ができないなかなかの困ったちゃんでした。

荒涼とした惑星で彼はかつての相棒と瓜二つの孫娘と出会い、戦闘に関してはずぶの素人の彼女の仲間2人と惑星を支配する帝王ザーグと戦おうとするが、唯我独尊で生きてきた彼は3人との情報伝達がまるでできない。

ああしろ、こうしろと指示を出す→あぁ、大事なことを伝えるのを忘れてた!→仲間がミスを冒して4人共々散々な目にあう。

協力せざるを得ない状況が生まれ、何とか4人で協力してザーグを倒しに行く!

 

彼の視線は彼方を見つめている、フィルムノワールを思わせるローキーな映像

1940年代のフィルムノワールかと見紛うほどのバズ・ライトイヤーという人物を立体的に浮かび上がらせる3DCGのクオリティの高さに感銘を受ける。

同情を感じざるを得ないオープニング20分のモンタージュ

彼方や虚空ばかり見つめてばかりいるバズが視線を注いだ先。

オープニングとクライマックスのシークエンスで反復される『リオ・ブラボー』ばりの剣の投げ渡し!

 

見どころ満載なのでぜひDisney+で鑑賞なさってくださいね。

 

最後は投げやりな文章になりましたが、ではまた!